宮廷画家のうるさい余白1巻感想!「構えることなく読める宮廷文化」

 

今でこそ、スマートフォン1つあれば、誰でも気軽に自分の姿を見て、それを好きな形で残す事ができます。本作の舞台はまだ人が自分の姿を留める術が、画家の絵筆しかなかった時代のお話です。

そもそも、画家に自分の肖像を残して貰えるのは身分の高い極々一部に限られています。

例えばそれは権力の象徴であったり、後世に自らの存在を知らしめる為であったり、政略結婚のお見合い相手へ送る為であったり。

 

そんな身分の高い人達の中でも特に、王族の肖像画を描くのが宮廷画家です。現代ではどうしても画家は芸術家としての側面が強い為、金銭や権力とは間逆で自由奔放に感じますが、中世ヨーロッパに於いて画家は芸術家というよりは王侯貴族や教会にお仕えする「勤め人」です。要するにビジネスで画家をやっている人が多かったのです。本作はそんな宮廷画家と絵画を巡る物語です。

 

 

物語は金にがめつい画家、シルバ・ベラスケスが王様の肖像画を描くため宮廷に招かれる所から始まります。

 

実はシルバは過去にも一度、貴族の推薦を受けて宮廷に招かれた事がありました。

 

しかし、その時は王様が忙し過ぎて描かせて貰えず、結局帰らされてしまったのです。

そんなリベンジに意気込むシルバの前に絵画を切り刻もうとする少女が現れます。王女のイサベルです。イサベルはどんな宮廷画家が描いた美しい肖像画も気に入らず、全て切り裂いて捨ててしまっていたのです。

 

 

シルバは王女との出会いの後、偶々時間が出来た王様の肖像画を描かせて頂くチャンスを得るのですが、それも束の間、王様には急用が入ってしまい、結局チャンスは持ち越しとなってしまいます。しかし転んでもタダでは起きないのがシルバ。

 

彼はある事に気が付き、王様の姿を見ずに肖像画を描く事に成功します。肖像画が王様のお目通りに叶い、彼は宮廷にアトリエを持つことを許されるのです。その後、シルバは王女が肖像画を破ってしまう本当の理由を知る事になります。

 

絵画に囚われ絵画に翻弄され、数奇な運命のめぐり合わせで出会ったシルバとイサベル。

二人の交流から、イサベルの淡い想いも見え隠れします。しかし、あくまでも関係は画家と王女。そして、シルバもまた、心の奥底に何かを抱えています。

 

 

 

本作は宮廷文化や西洋美術史の一端が垣間見ることができる作品ですが、だからと言って構える必要もありません。

必要以上に説明的になりがちな歴史という題材に若干のファンタジーとフィクションを与えた、漫画として読み応えのある作品となっています。

 

資料や時代考証もきちんとなされているので、本作をきっかけに宮廷文化や美術史を紐解いていくのも面白いかもしれません。

 


 

 


 

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